Service 03
立場を超え、産学が共創する成長へ
産学連携の強化
産学連携の現場では、企業と大学の間に、立場や目的の違いから生じる不信感が残ります。その間にも、日本の技術力は他国の後塵を拝しつつあります。 共通の価値創出に向けて知恵を出し合うことが、次の成長の鍵です。

知財が抱える問題点
産学連携の現場では、企業と大学の立場や目的の違いから、歩調がずれる場面があります。互いにリスク回避が先行し、対話が深まらないまま連携が形だけにとどまることもあります。
相互理解を深めるために、まずはその問題点がどこから生じているかを見ていきましょう。
01
連携開始時の大学への支払些少
大学への公的助成が減少する中、企業との連携を収益につなげる必要があります。しかし、連携開始時の対価設計が十分に構築できないため、研究を遂行するうえで必要な支払いが得られないことがあります。
02
研究支援を単純作業と捉える企業の姿勢
一部の企業では、大学を知のパートナーとしてではなく、単純な作業を担う下請的存在として扱うことがあります。その結果、研究者が反復的な作業に追われ、本来の研究時間を確保できないことがあります。
03
成果の帰属問題①(発明者主義の運用硬直化)
大学の契約書式では、発明者主義(発明者に特許権などの権利を帰属させる考え方)を原則としています。一方で、企業は発明を事業化しやすくするため、より柔軟な知財の帰属設計を望んでいます。
この考え方の違いから交渉が長引き、企業側、特に研究者の間で、連携に慎重になる要因となっています。
04
成果の帰属問題②(大学の発明への貢献有無)
大学は企業との連携において、研究成果を収益につなげることが課題となっています。そのため、発明への貢献が発明者レベルに達したか不明な場合でも、発明者としての地位を主張し、企業と意見が分かれることがあります。
たとえば、学術的な指導のような一般的助言でも、大学が共同出願を求める場合などに、起こりやすい問題です。
05
知財における企業の実施権等の選択肢の制約
大学の契約書式では、研究成果を企業に帰属させたり、独占権を付与したりする場合、大学側の同意が必要となっています。そのため、企業は実質的に大学の方針に従わざるを得ず、交渉の対等性が損なわれることがあります。
一方で、大学は企業が一方的に権利を主張することへの懸念を抱いています。
06
発明完成後事業化前に対価スキーム(※)を要決定の選択肢の制約
共同研究の成果として発明が出た後も、企業側は事業化に向けて、追加の研究開発、市場分析、広告宣伝、生産設備投資などの業務を進めなければなりません。そのため、こうした追加業務を踏まえた適切な対価の額や決定方法、発明完成時の段階で確定させることは容易ではありません。
このような場合、“売上高の一定率とし、事業化決定時に別途協議”といった対価スキームの先送りが行われる傾向がありますが、これにも課題があります。
→
大学側は、企業の追加業務を十分に考慮せず、業界慣行の率をそのまま要求しがちです。
→
一方、企業側は「最終的にどの程度の対価を求められるか読めない」ため、成果活用に消極的になる恐れがあります。
(※) 対価スキームの例:譲渡対価/一時金/ロイヤルティ/不実施補償
こうした問題を解決に導くには
01
連携開始時の大学への支払些少
大学として、文科省の作成した契約書式に拘らず、研究に対して大学から受領する支払の内容や方法にバリエーションを持たせる。例えば、以下のとおり。
→
この案件は、研究着手時に大きく研究費を取る
→
この案件は、研究成功時に大きく対価を取る
→
この案件は、事業化まで温めてから対価を取る
02
研究支援を単純作業と捉える企業の姿勢
こうした企業の姿勢が、産学連携の健全な発展を妨げているのは事実です。大学としても、安易に受け入れるのではなく、対等な立場で改善を促すことが求められます。
そこで、大学として次のような対応が考えられます。
→
弁護士やコンサルタントなど第三者を通じて、企業に改善を働きかける。
→
研究の趣旨や目的を再確認し、契約段階で役割と責任の線引きを明確にする。
→
方針の合わない企業とは、無理に契約を結ばない。
03
成果の帰属問題①(発明者主義の運用硬直化)
この点は文科省が問題視し、成果の帰属に関する硬直化を打開する目的で、2016年に11類型の契約モデルを作りました。いわゆる“さくらツール”と言う名称の契約モデル集です。ただし、まだ浸透したとは言えない状況です。
企業における対策の例は、以下のとおりです。
→
“さくらツール”を習得し、活用できるようにする。
→
“さくらツール”を利用するよう、大学に働きかける。
→
大学内に味方(例:大学教授)を探す。
→
その他の、大学にとって受入可能な方法(例:付随契約によって条件を変更)を模索する。
04
成果の帰属問題②(大学の発明への貢献有無)
発明への貢献が発明者レベルに達したかどうかの判断基準が曖昧であることが問題です。したがって、その基準をあらかじめ明確にしておくことが望まれます。
→
大学としては、社内規程などにより「どの程度の貢献で発明者とみなすか」を明文化する。
→
企業としては、重要な案件の場合、契約締結時に覚書などを作成し、発明者判断のルールを共有する。
→
双方で、研究開始時に貢献の範囲や成果物の取扱いについて協議・記録しておく
→たとえば学術指導契約では、「大学が発明に至る可能性のある指導を行う場合は、事前に書面でその旨を伝える」旨を明記しておく。
05
知財における企業の実施権等の選択肢の制約
“さくらツール”(2016年に文科省が作った11類型の契約モデル集)の類型において、実施権を誰に渡すのかについて明記するものがあります。「成果の帰属問題①」の議論と同様、このツールの活用を検討するのが肝要です。
06
発明完成後事業化前に対価スキーム(※)を要決定
共同研究契約の成果たる知財の利用に関する対価のスキーム作成は、簡単な解決はできません。相互に、以下のとおり相手方への気くばりが必要です。
(i) 企業側:大学側では、企業が知財をどの事業・どの地域に利用し、その際の利益がどの程度で、また成果を得る前にどの程度の企業の追加貢献(例:追加の研究開発、広告宣伝活動等)が必要か、大学への理解促進が必要。特に、不誠実な企業に騙される経験をした大学が多いことも、企業は知っておくべき。
(ii) 大学側:企業からは“事業経験に乏しい”と思われていることを自覚し、企業の努力、特に企業が為すべき追加貢献や、競合の厳しさの話に耳を傾けるべき。
(※) 対価スキームの例:譲渡対価/一時金/ロイヤルティ/不実施補償
関連情報①
さくらツール(個別型)の
11類型と書式のハイパーリンク
文部科学省が提供する契約書モデルをご紹介します。
関連情報②
さくらツール類型9
(原則として個別帰属)の解説
大学との産学連携における契約書モデルの解説をします。
さくらツール(個別型)の
11類型と書式のハイパーリンク
ここでは、文部科学省が提供する契約書モデルをご紹介します。
| 類型 | 帰属 | 契約書モデル | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 類型0 | 大学 | 企:非独占使用のみ | |
| 類型1 | 大学 | 企:独占使用選択権 | |
| 類型2 | 大学 | 企:譲渡選択権 | |
| 類型3 | 大学 | 企:独占使用、譲渡選択権 | |
| 類型4 | 企業 | 学:他社許諾可 学:公表可 学:移転選択権 | |
| 類型5 | 企業 | 学:商業使用不可 学:公表可 | |
| 類型6 | 企業 | 学:商業使用不可 学:公表不可 | |
| 類型7 | 発明者基準 | 大学帰属・共有成果に譲渡&使用許諾の企業側選択権有 | |
| 類型8 | 発明者基準 | 類型7+共有成果について両者許諾自由の事前包括許諾 | |
| 類型9 | 原則として個別 | 大学帰属成果に譲渡&使用許諾の企業側選択権有 ・共有成果は事前包括許諾 | |
| 類型10 | 常に個別 | 技術分野で棲分け(共有なし) ・両者自己帰属成果に制約なし |
さくらツール類型9
(原則として個別帰属)の解説
ここでは、文部科学省が提供する契約書モデルをご紹介します。

お問い合わせ
簡単な相談であれば無料でメールで回答いたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。
さくらツール類型9の特徴は、以下のとおりです。
1. 知的財産権の帰属
・
大学(甲)に帰属:技術分野A
・
企業(乙)に帰属:技術分野B
・
共有:何れの技術分野にも属さないもの
<例>
・
大学に帰属:医薬品TNBの、糖尿病用途に関する知見
・
企業に帰属:医薬品TNBの製造方法
・
共有:医薬品TNBの、糖尿病以外の用途に関する知見
2. 大学単独発明(以下「甲発明等」の取扱い
企業が何れかの中から自己による実施等を選択できる。
・
甲発明等を、共同研究以外の目的で、非独占的に実施
・
甲発明等を、独占的に実施
・
甲発明等を、有償で譲受け
以上の条件で契約できれば、大学と企業との力関係は相応にバランスすることとなります。